アテになる話6F 未解決事件

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ゾディアック事件51年後、暗号は素人が解いた

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日本と世界の未解決事件を1日1個、酒の肴にする連載。最後に「今どうなってるか」を判定する。【未解決】【時効】【冤罪】【真相不明】、主にこの4つや。

今日は人が死んどる回や。笑いどころは被害者やのうて、警察の迷走と、犯人のおかしな自己演出だけや。


手紙の主は「ゾディアック」と名乗った

1968年の暮れから1969年の秋にかけて、カリフォルニア州北部で、カップルやタクシー運転手が次々に襲われた。警察が同一犯と認める犠牲者は5人。2人は襲われて生き残った。

襲われた場所に傾向がある。最初の2件は、若いカップルが車を停める人気ない場所——いわゆるラバーズレーンや。1件目は湖のそばの暗い道、2件目は公園の駐車場やった。2件目のあとは、犯人みずから近くの公衆電話から警察に電話して「今しがた殺した」と通報しとる。3件目の湖畔では、頭からすっぽり頭巾をかぶって、胸に照準マークを縫い付けた格好で現れた。生き残った男性の証言や。そして最後、1969年10月、サンフランシスコ市内でタクシー運転手が殺された。その数日後、新聞社に届いた手紙には、被害者のシャツの切れ端が同封されとった。

変わっとったんは、犯人が新聞社に手紙を送りつけたことや。書き出しは決まって「This is the Zodiac speaking」——「ゾディアックが話をする」。円に十字の照準マークが署名がわりや。自分で名前を付けて、自分で広報しよった。

暗号は素人が解いた

手紙には何通か、記号だらけの暗号文が付いとった。「新聞の一面に載せろ。載せんとまた殺る」いうてな。

408文字の最初の暗号は、1969年の夏、新聞に載って数日で解けた。解いたんは警察でもFBIでもない。サリナスいう町の高校の先生と、その嫁さんや。休日にパズル感覚で解いてもうた。中身は「殺すのが楽しい」いう薄気味悪い自慢で、肝心の名前は書いてなかった。

二つ目は51年かかった

もう一個、340文字の暗号が残った。こっちは誰にも解けんかった。FBIも、暗号のプロも、51年間解けんかった。

解けたんは2020年12月や。解いたんは3人組——アメリカのウェブデザイナー、オーストラリアの数学者、ベルギーの倉庫作業員でプログラマー。全員素人や。ネットで知り合うて、自分らで組んだプログラムで、文字を斜めに読む仕掛けを見破ってやっと文章が出てきた。FBIが「解読は正しい」と認めた。ベルギーの男が組んだ解読ソフトは、その後も別の歴史的暗号の解読に使われとるそうや。

中身は、また挑発やった。死刑が怖うない云々と。つまり51年かけて解いた暗号に、犯人の名前は入ってへんかった。残る短い暗号2つは、今も解けとらん。

なんで捕まらんかったん

まず管轄がバラバラやった。郡の警察、市の警察。それぞれ縄張りが違うて、情報のやり取りが遅れた。当時、境をまたぐ事件の連絡は電話と紙や。現場の証拠も薄い。

それと、本命の容疑者が立たんかった。生き残った2人の証言から似顔絵は作られた。ずっと「最有力」と言われ続けた元教師の男もおった。せやけど筆跡は一致せん、後のDNA鑑定でも一致せんかった。その男は1992年に病死した。逮捕は一度もない。

おまけに、手紙のせいで捜査はさらに混乱した。事件が有名になると、本人に成り済ました偽の手紙が何通も舞い込む。「ほんまの手紙はどれか」を仕分けするだけで、警察の手間が食われた。犯人は続きを書くだけで、世間が勝手にノイズを増やしてくれる仕組みや。後年、映画にも本にもなって、名前だけは世界的に売れた。肝心の中身は、ずっと空っぽのままや。

ほんで判定やけど

【未解決】や。

事件は今もオープンのままや。暗号は解けても、解けた文に答えは書いてへんかった。こいつは「答えが出てもみんなが信じきれん謎」やのうて、「答えを入れてへん謎」をわざと売り込んだんや。挑発は鮮やかやったけど、中身はからっぽやった。

未解決事件の答えは、たいてい最初から近くにある。はずや。せやけどこの犯人は、近くどころか紙の上にすら答えを置いてへん。新聞を私物の掲示板にして、半世紀後まで話題を引っ張った。広報だけは一流やった。腹立つことに。

ほな、今日は古い暗号でも眺めてから飲もか。解けへんけどな。


帰りに寄る棚今日は棚なし。人が死んどる話で物は売らん。

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